政策報告

― 施策目標 ―

 

1:自立型経済の構築に向けた産業の振興と雇用の創出
2:社会資本・産業基盤の整備と海洋資源の開発
3:米軍基地の整理縮小と返還軍用地跡地利用の促進
4:子育て・高齢者施策の拡充と健康福祉社会の実現
5:沖縄の地域特性を活かした農林水産業の振興とおきなわブランドの確立
6:教育・文化・スポーツの振興と科学技術研究機関の連携強化
7:離島・過疎地域生活基盤の整備と住みよい地域づくり

政策の概要

平成27年度内閣府沖縄関係予算は、昨年度に比べ162億円の減となったが、沖縄振興交付金1,628億円、那覇空港滑走路増設事業費330億円を含む、総額3,340億円が確保された。
自民党沖縄振興調査会及び美ら島議員連盟の働きかけにより、当初の予想より最小限の減少にとどめることが出来たが、今後の沖縄振興予算の行方に不透明感が増したことは否めない。
平成24(2012)年度からスタートした「沖縄21世紀ビジョン基本計画」も、4年目に入り、経済の自立に向けた施策の展開も着実な進展を見せている。
政府は、平成24年(2012)4月に、10年間の時限法である「沖縄振興特別措置法」を延長し、沖縄振興の基本的な方針「沖縄振興基本方針(内閣総理大臣決定)」を決定するなど、今後の沖縄振興策の各種施策・事業について政府の取り組む基本方針を示している。
さらに、安倍総理は、現行の沖縄振興期間である平成33年度まで、毎年3,000億円台の沖縄振興予算の確保を表明している。
しかし、翁長雄志県知事の誕生は、これまでの県と政府との信頼関係を大きく変え、今度の沖縄振興についての政府の姿勢にも影響を与えないか懸念される。
県経済の長期計画である、「沖縄21世紀ビジョン基本計画」は、本県の位置が東アジアの中心に位置し広大な排他的経済水域(EEZ)を有している地理的有利性に加えて、中国をはじめとするアジア諸国の近年の経済発展で、本県の位置的有利性を生かした、人、モノ、資金、情報、文化等の交流の懸け橋としての役割を担える可能性を活かし、自立経済の構築に資するものである。
しかし、現状は、本県の置かれた地理的位置からくる島嶼特有の輸送コストの高さなどの不利性、産業のみならず農林水産業の小規模・脆弱性からくる県外との競争力等の壁を打破するまでには至ってないのが現状であり、脱振興策を言うのは時期尚早である。
厳しい国家財政の中で、政府は、振興予算の確保やわが県連が政府に対し強く求めていた、沖縄振興関連3税制について改正・延長を決定し、県経済への影響に配慮している。
このように、県経済の更なる発展や将来の自立向け、21世紀ビジョンに掲げる施策の実現を図るには、政府の振興策が必要である。
県連は、県経済の山積する課題の解決に全力で取り組む。
そして、政府に対し、「地域の特色なくして日本の再生なし」との骨太方針に基づき、本県を成長するアジアの玄関口として、日本経済活性化のけん引役となるよう、国家戦略の中に組み込れ、沖縄振興策を総合的・積極的に進めて行くよう強く求めて行く。
このため県連は、次の7つの施策目標を実現し、未来を担う子供たちが夢と希望が持てる新たな沖縄づくりに全力で取り組む決意である。

1.自立型経済の構築に向けた産業の振興と雇用の創出

 自民党は、沖縄振興策の一層の促進を図るため沖縄関係税制について、駐留軍用地の公共用地先行取得に係る課税の特例措置の拡充、揮発油税及び地方揮発油税の軽減措置の延長、電気事業者の発電に係る石油石炭税の軽減措置の延長・改正を行った。
 そして厳しい財政状況の中、平成27年度沖縄関連予算について、沖縄振興交付金1,618億円、那覇空港滑走路増設事業費330億円を含む、総額3,340億円を確保し、それにより、県当初予算も、7,464億9,700万円と過去最大規模の編成となった。
 これにより21世紀ビジョン基本計画に基づく各種施策の実施に向けた取組や一括交付金を活用した市町村における事業の進展が期待出来、更なる産業振興、雇用の改善に向け取り組みを促進する。
県連は、県経済の自立に向け、次の事業の実現を目指し全力で取組む。

 

1:沖縄21世紀ビジョン基本計画施策の着実な実施と沖縄振興一括交付金を含めた沖縄振興予算の満額確保を図ります。
2:那覇空港第2滑走路の整備を促進し沖縄の新たな交通拠点となる空港ターミナルビルの整備を進めます。
3:国家戦略特区を活用し世界水準の国際観光リゾート地域を形成し、県経済の自立を図ります。
4:既存の経済特区等を統合しアジア先進地域等と国際競争力のある新たな全県特区の実現を政府に求めます。
5:那覇空港の国際物流、航空機整備拠点、産業化に取り組みます。
6:空港・港湾の物流機能を活用した臨空・臨港形産業の集積を促進し新たなリーディング産業の創設を図ります。
7:2021年までに観光客1,000万人超、観光収入1兆円の実現に向けた誘致活動・受け入れ体制整備の取り組みを促進します。
8:MICEの開催・誘致促進のため2万人収容の大型MICE誘致の実現を図ります。
9:企業の誘致・立地を促進し産業の活性化と雇用の創設を図ります。
10:地域の経済や雇用を支える中小企業の振興を図るため資金調達の円滑化等総合支援策の充実を図ります。
11:沖縄IT津梁パークの整備と人材育成等を促進し国際的IT拠点の形成を図ります。
12:みんなでグッジョブ運動を推進し求職者支援や雇用の拡大・失業率の改善等の整備を図ります。

2.社会資本・産業基盤の整備と海洋資源の開発

社会資本の整備は、県経済の活性化や更なる成長のエンジンとして欠くことの出来ない将来投資である。
国による沖縄振興策等支援対策で県内の生活基盤等の整備は相当程度進んでいるが、鉄軌道のない本県において、都市部を中心とした慢性的な交通渋滞や観光の発展を図る上で、幹線道路、港湾、災害対策など、社会資本の整備が必要である。
国の財政がひっ迫する中、公共事業費増額を如何に図るかが大きな課題となっており、特に、那覇空港へのアクセス道路の整備や沖縄都市モノレールの中南部への延長、鉄軌道の導入等の早期導入が求められている。
県連は、党本部の沖縄振興策を活用し、次の事業の実現に向け取り組みを強化する。

 

1:沖縄都市モノレール浦添延長2019年開業と中南部地区への更なる延長を図ります。
2:新たな公共交通システムの導入に向け沖縄鉄軌道の2020年着工と財源の確保を図ります。
3:那覇港の大型クルーズ船に対応した港湾整備と国際物流機能の強化を図ります。
4:那覇空港自動車道・沖縄西海岸道路・南部東道路等の幹線道路を整備し本島南北軸・東西軸を結ぶ道路ネットワークを実現します。
5:中城港湾の整備を促進し航路拡充と物流拠点の形成、産業支援港湾として着実に整備を進めます。
6:中城湾港泡瀬地区埋め立て事業を促進し東部海浜開発事業を推進します。
7:公共施設等の耐震化・防災対策を推進し全県電線類地中化事業を拡大します。
8:国・県発注公共工事の県内発注率向上と米軍発注工事への県内企業の入札参加・受注促進を実現します。
9:沖縄周辺海域の改定資源の調査研究・産業化の可能性調査を推進し新エネルギーの導入に向け取り組みを強化します。

3.米軍基地の整理縮小と返還軍用地跡地利用の促進

米軍普天間飛行場の辺野古移設問題は、移設阻止を掲げる翁長雄志知事の誕生で、政府との間に深刻な対立を生じさせている。
名護市辺野古移設問題の原点は、世界一危険と言われる米軍普天間飛行場の危険性の除去と早期返還にある。
 1996年に普天間飛行場の7年以内の県内移設条件付き全面返還が日米合意されてから、すでに19年が経過しているが危険性は一向に軽減されていない。
そのため県連は、米軍普天間飛行場の固定化阻止に向け強力に運動を展開するとともに、日米地位協定の抜本的な見直しを求めて行く。
そして嘉手納以南の基地の早期返還を実現し、跡地利用を推進するため、次の事業の実現に向け強力に取組む。

 

1:米軍普天間飛行場の危険性除去と早期返還を実現するため、辺野古移設を含むあらゆる可能性を追求し米軍普天間飛行場の固定化阻止に全力で取り組みます。
2:米軍普天間飛行場の機能を県外に移転し5年以内に運用停止にするなど、県連が政府に求めた5項目の要請の実現に向け、党本部と連携し全力で取り組みます。
3:オスプレイ県外配備、訓練の県外移転に向けた取り組みを進めます。
4:米軍嘉手納基地以南の基地の前倒し返還の実現と跡地の有効利用に努めます。
5:日米地位協定の抜本的見直しを強く求め、基地負担の軽減に取り組みます。
6:中南部都市圏の駐留軍用地跡地利用の促進と米軍普天間飛行場跡地利用に向け全力で取り組みます。
7:跡地法に基づき拠点返還地に指定されたキャンプ瑞慶覧西普天間住宅地区跡地の利活用の取り組み支援を促進します。
8:不発弾処理の負担軽減、不発弾処理の加速化と探査補助など処理に要する費用の全額国負担を図ります。

4. 子育て・高齢者施策の拡充と健康福祉社会の実現

少子・高齢化が進展する中で、安心して子どもを産み育てることが出来る環境の整備と高齢者が元気で活躍できる社会の実現が求められている。
そのため、認可保育所への入所を待っている待機児童を解消し、安心・安全な子育て支援が必要である。
また、高齢者やすべての人がいつまでも共に暮らせる、生き生きとした地域づくりへの取り組みを強化する。
 このため、市町村と連携した待機児童の解消、認可保育所の増設、無認可保育所の認可の促進など、子育て支援を進める必要がある。
また、小児科や産婦人科医師が全国的に不足する中、本県における医師確保が喫緊の課題である。
県連は、子育て支援や高齢者にやさしい住み良い生活環境の構築を目指し、健康福祉社会の実現を図る。

 

1:認可保育所の増設や認可外保育所の認可化の促進を図り2017年度までに待機児童ゼロを図ります。
2:保育士不足を解消するため保育士・保育園職員の処遇改善を図り人材確保・育成を促進します。
3:安心して出産・子育てが出来る子ども医療費助成の通院年齢対象の引き下げを図ります。
4:県立病院の産婦人科・小児科医師の確保、看護師の適正配置を実現します。
5:県立病院の施設整備と地域医療の拡充を図り、八重山病院の2017年度開院を図ります。
6:養護老人ホームの増設・拡充強化と介護職員等の処遇改善・支援制度の強化に取り組みます。
7:高齢者・障がい者が民間賃貸住宅へ円滑に入居出来る支援体制に取り組みます。
8:母子保健・小児医療の拡充を図り不妊治療の負担軽減に取り組みます。
9:発達障害の早期発見と支援の拡充等を図り子どもの育ちに不安を持つ保護者の支援体制づくりを実現します。
10:日本一の長寿県復活を目指し生活習慣病やがんの予防対策、県民の食育教育を推進します。

5. 沖縄の地域特性を活かした農林水産業の振興とおきなわブランドの確立

わが国唯一の亜熱帯性気候にあり、離島県で地理的不利性と言う状況の中、多様な地域資源や沖縄特有の地域特性を活かし、アジアなど海外を見据え、おきなわブランドを始めとする戦略品目の開発など、本県農林水産業の積極的展開が見られる。
このため、拠点産地の形成、生産基盤の整備を促進し、販路の拡大やフロンティア型農林水産業の振興を進める必要がある。
また、本県農林水産業の課題である、従事者の高齢化や後継者不足への対応、新たな担い手の育成・確保に全力で取り組むことが必要である。
さらに、TPP構想への行方は、本県農業に大きな影響が出ることから、聖域堅持を政府に対し強く求めて行く。
県連は、本県の農林水産業を守るため、次の事業の実現に向け全力で取組む。

 

1:農業の6次産業化を推進し戦略品目として販路拡大を図ります。
2:おきなわブランドの拡充や農水産拠点産地の強化を実現します。
3:TPP(環太平洋連携協定)交渉で農産物重要5品目の聖域確保を守ります。
4:台風等災害に強い栽培施設等生産基盤の整備や耕作放棄地の発生防止を図り農業農村の整備を図ります。
5:サトウキビ生産の振興・含みつ糖製糖施設への整備支援と分みつ糖・含みつ糖の安定供給対策に取り組みます。
6:農林水産業の新規就農者や担い手育成の推進し後継若者の定着を図ります。
7:県内水産業の振興を図るため産地漁協の強化や後継者育成を図ります。
8:日台漁業協定の継続的見直しと日中漁業協定の見直しを提起し尖閣諸島周辺海域における県内漁業の安全操業の確保を図ります。
9:ホテル・ホテル訓練区域の使用期限の解除対象水域の拡大及び対象漁業の拡充を求めます。

6.教育・文化・スポーツの振興と科学技術研究機関の連携強化

本県教育は、長年において全国並みの学力向上を「課題」として位置づけ、学校教育現場において、教員の指導力向上や学校のあり方の改善等に取り組んできた。
その中で、「少人数学級」は児童生徒が授業に集中し、教員がきめ細かな教育指導に効果が期待できることから、すべての小中校に広げて行くことが必要である。
また、「家庭教育」の重要性から、学校・家庭・地域が連携を深め、保護者や地域による学校支援、児童生徒の放課後における見守り等、支援が求められている。
本県科学技術の発展を図るため、世界的最高水準の教育機関「沖縄科学技術大学院大学」の活用や県内大学や研究機関等との共同研究、人材の確保育成への取り組みが必要である。
さらに外国語教育等の充実や本県の伝統文化の継承、スポーツの振興を図ると伴に、人材育成、教育・文化の振興を図る。

 

1:少人数学級の全学年への拡大と正規教員率の向上を図りきめ細やかな教育指導の強化を図ります。
2:幼児教育の充実強化と無償化の実現に向け取組みの強化と経済的な理由等で就学困難となっている生徒たちへの支援の充実を図ります。
3:小中高校老朽校舎など学校施設の改修・整備と耐震化対策を推進します。
4:自立的経済発展に資するため世界的最高水準の教育機関「沖縄科学技術大学院大学」の更なる教育・研究環境を整備し県内研究機関等との共同研究の拡大を図ります。
5:科学技術の振興を進め宇宙技術開発センター(仮称)設置を推進します。
6:JI公式戦が開催可能なサッカー場の整備をはじめ各種スポーツ施設の整備を実現します。
7:2020年東京オリンピック・パラリンピックの競技に「空手」の追加と沖縄伝統空手をオープニングセレモニーに演出として取り入れるよう要請します。
8:沖縄の伝統文化である組踊・琉球舞踊・沖縄芝居や「工芸の杜(仮称)」を整備し染織物・陶器・漆器等の保全・継承と後継者の育成を図ります。
9:沖縄空手道会館の2016年度供用開始に向け早期整備し空手発祥の地・沖縄を世界に発信しユネスコ無形文化遺産への登録に向け取り組みます。

7. 離島・過疎地域政勝基盤の整備と住みよい地域づくり

本県の離島は、亜熱帯性気候にあって、豊かな自然に恵まれ特異性をもった世界に誇れる歴史的な伝統芸能を有しており、それぞれの島々の持つ魅力を如何に発揮できるかが課題となっている。
一方で人口減少や高齢化、若者の流出など、離島の抱える問題に対する対応も喫緊の課題となっている。
そのため、離島の航空・航路の交通コスト負担の軽減や離島農林水産業の輸送費用一部補助などを拡充し、離島・過疎地域住民のユニバーサルサービスの確保など、離島・過疎地域ゆえの課題解決が求められている。
県連は、次の事業の実現に向け強力に取組み、若者の定住と地域の活性化を図って行く。

 

1:離島地域の港湾・空港施設の整備や道路・公園等社会基盤の整備を進めます。
2:離島航路の安定を図るため離島航路事業者の船舶の建造・購入支援や航空機の購入支援に取り組みます。
3:離島航路・航空路の交通コスト負担の軽減や事業者への運航費の助成・生活必需品等への輸送経費等の助成を図ります。
4:離島の農林水産物の輸送費用の低減や小規模離島への日常品輸送経費の低減を促進します。
5:離島の石油製品価格の軽減に向け補助制度の拡充を図ります。
6:離島出身高校生の学生寮としての機能を持つ「離島児童・生徒支援センター(仮称)」の早期設置を実現します。
7:2017年度開院に向け県立八重山病院の新設移転に取り組みます。
8:下地島空港の維持継続と新たな利活用の実現を図ります。
9:伊平屋空港の早期実現を図ります。
10:離島の実態に即した建設工事施工単価設定を実現します。
11:離島の医師確保・救急搬送体制の充実・遠隔医療支援システムの活用を推進します。
12:本部港の大型クルーズ船に対応した岸壁等の整備と北部圏域の拠点港湾機能の整備を促進します。